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2021.09.20(月)

地元の味を支える生産者を知ってもらいたい/伝所鳩のお便り(35)

チコニア

おはようございます。本日は定休日になります。くれぐれもお間違いのないようお気をつけください。

豊岡市を含むこのあたりは、但馬(たじま)と呼ばれるエリアで、海も山もある自然豊かな地域です。自然が多く空気や水が綺麗だということは、当然ながら新鮮で豊富な食材に囲まれていて、日々美味しい食材と出会ってはその味のポテンシャルの高さに驚いています。

そんな恵まれた食材は、その地域でしか作られていないものがあったり、その地域特有の味があります。気候や風土によってそこでしか作れないものもあれば、お醤油が辛いところもあれば、甘いところもあるように、同じ醤油でも地域の好みによってぜんぜん違うものです。

つまり地元の味や母親の味は、実は地元の生産者さんが作る食材や調味料が大きく関係していて、たとえ母親が作っても調味料が違えば決して慣れ親しんだ懐かしい味にはならないものです。例えばラーメン屋さんひとつとっても、地元の麺を使っているならば、製麺所の味が基本になるにように、地元の生産者さんが長い時間をかけて地元の味を築いてきたものだと言えます。

そんな地元の味を支える地域の生産者さんの味は、一歩その地域を出れば味わうことができないものがほとんどです。地域の中では当たり前の味や食材も、他の地域に行けば全く知られていないというのは珍しいことではありません。

地域には地域の味があるように、地域で暮らす人にとって最良の味が、他の地域でも受け入れられるかというとそうではなかったり、長年根付いてきた定番の味を変えるというのは難しいものです。

しかし、ぼくは自分が生まれ育った味を多くの方に知ってもらいたいですし、たとえ地元を離れて他の地域に住んでいても当たり前に食べられるものであってほしい。そして、地元の味を忘れないでほしいと願っています。

そんな想いからはじめたのが「チコニア」というブランド。ぼくらが大切にしたい地元但馬の味を作る生産者さんと何度も対話を重ね、生産現場を見学させてもらい、そして最終的に一緒にオリジナルの商品を完成させ、それらを直接お客さまに販売することで、食を通じて但馬の生産者さんを知ってもらったり、但馬を離れた人に再び思い出してもらう。これがぼくらがこの味を守れる小さな手段だと考えています。

味というのは難しいもので、美味しい美味しくないは人それぞれ違います。はっきり言ってしまえば味は好みです。慣れ親しんだ味というのは舌が覚えているもので、そこで生まれ育った人にしか分からない感覚と言っていいでしょう。だからこそ、ぼくらはチコニアの商品が誰にとっても美味しいかというとそうではないと思っているので、極端に「美味しい」とか「うまい」という表現であったりアピールの仕方をしないようにしているくらい、味というのは好みが分かれるものです。

それでもこの味を残していきたいと思うのは、やはり地元の味だからでしょう。生産者さんの中には世代交代をしてでも、味を守ろうと繋いでいっているところもあり、ぼくらはぼくらにできる方法でこの味を繋いでいきたいと思っています。

チコニアの商品は、この味に慣れ親しんだ地元の方が自分のためで買うのではなく(もちろん自分のために買っていただいてもいいですが)、自分たちが大切にしたいこの味を知ってもらいたいという方に「贈ってもらう」ことで、味を広めることへと繋がっていく商品だと位置づけています。但馬のことを知らない方には、どんな場所でこの味が生まれているのかあなたが知っているストーリーも添えて贈っていただけるといいのかなと思います。

多くの方に協力をいただきながら、少しずつ形になってきたプロジェクトで、別の地域で販売してくれている仲間もできてきました。しかし、まだまだぼくらの力だけでは難しい部分も多くあるので、チコニアを使ってみなさんで味を繋げていってもらえたら嬉しいです。

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