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2022.03.01(火)

そのお金はどこへ/伝所鳩のお便り(50)

伝所鳩

「スーパーで買った方が安いよ」

近所でお店をやっているおばちゃんは、ぼくにこう言った。

地方で暮らしていると自分のお金をどこに、誰のために使うのかということをよく考えるようになりました。

小さな個店は、大量に仕入れることができないので、値段はどうしても大手量販店に比べると高くなってしまうし、人口が少なく回転率の悪い地域では、常に大量の在庫を抱えておくこともできない。賞味期限のあるものなら期限切れで廃棄も出てくる。これを避けるために厳選して限られたものだけを揃えるようになっていくので、田舎はどうしても手に入らないものが多くなる。なぜこんなにも田舎は品ぞろえが悪いんだろうとずっと思っていたけど、お店を続けていく上で仕方のないことだというのは、自分がお店を始めてみて痛感したことです。

近所にお店がない、もしくはお店に行っても求めている商品がなければ、当然ながら都会へ買い物へ出かけたり、ネットで購入することになってしまう。お店にあったとしても、ネットや大手量販店の方が安いことも多いし、店舗で取り寄せてもらうよりもネットの方が早く届くこともあります。

こうして地域で消費せず、都会やネットで消費しているのはこの地域に限ったことではなく、どこの田舎でも昔から起こっていることかなと思うし、ぼくらもどうしても必要なものはネットで買うこともよくあるし、都会へ出かけることもあります。

ただ、最近は都会に出かけても買いたいものがなかったり、情報量が多く探すことに疲弊してしまうことが多くなりました。そして、最終的に誰がやっているお店なのか分からないところで、誰が作っているのか分からないものを買うことに疑問を感じるようになり、都会での消費がとても少なくなったように思います。

誰もが知っている量販店や、ショッピングモールには、求めている商品が見つかりやすいかもしれないし、そこで初めて出会う商品もあるかもしれない。ぶらぶらとお店を見て回るのも楽しいかもしれない。ぼくも若い頃そうでした。でも、規模の大きなお店や誰がやっているのか分からないお店で消費すると、自分たちのお金はいったい誰の手に渡っているんだろう、誰がそれで喜んでくれているんだろうかと考えるようになりました。

冒頭の近所のおばちゃんが言ってくれたように、確かに安いお店は他にもたくさんあります。若い人なら安く買う方法をたくさん知っていることでしょう。でも、同じものが安く買えるとしても誰がやっているか分からないお店よりも、身近なおばちゃんのお店で買いたい。きれいごとのようにも聞こえるかもしれないけど、食品はどうしても廃棄になってしまうかもしれない可能性があります。お店である以上、仕入れないといけないので、ぼくの代わりに誰かが買うかもしれないけど、買う人が現れなければ間違いなくそれは廃棄になってしまう。

ネットや量販店で安くで買えるとプラスになったようにも思うけど、最終的にはそのお店がなくなってしまうことの方が地域全体にとってはマイナスのような気もします。今あるお店が辞めるのは簡単なこと。でも、新たにお店ができるの難しい。だからこそ精一杯頑張っているお店には一つでもなくなって欲しくないなと思います。

お店は気づいたらあっという間に無くなってしまうし、そうなってしまったときには手遅れなことが多い。顔が見えるお店、続いて欲しいお店は応援していきたい。

と言っても明日は我が身なので、人の心配をしている立場でもないですが、伝所鳩の商品も全て定価販売。セールや値引きは一切行っていません。扱っている商品が価格競争のない定番品ばかりなので、他の店舗でも安くで買えることはほとんどないと思いますが、値段ではないところで伝所鳩もお客さまに選んでもらえるように頑張らないとなと思います。

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