トップ / 食べ物以外でもつくり手が見えるものを選びたい
下町の町工場のおっちゃんが作った「てのひらトング」をご存知ですか?今日はこの商品のお話です。
皆さんは、商品を購入するとき、どんな点を大切にものを選びますか?
ショッピングモールやネットショップで商品を買うのが当たり前になりましたが、食べ物のように作っている人の顔を思い浮かべながらものを選ぶ方は少ないかもしれません。
誰が作っているとか、どんな素材でどういう風に作られているかは興味がなく、一円でも安く買いたいと思われる方もいらっしゃるかもしれません。
これまで、さまざまなつくり手さんの元を訪れてきましたが、一番最初に伺った工場は、東京都墨田区にある「笠原スプリング」さんというプレス工場でした。
笠原さんは、自動車の部品などをつくるいわゆる下請けの工場で、従業員を雇わず、たった一人で切り盛りされています。自動車で使われる小さな部品は、表に出るような仕事ではなく、見えない部分で使われるものばかり。笠原さん自身も、何に使われているのか分からないと笑って話します。
そんな笠原さんが、下請け脱却のため、自社製品を作りはじめたのは、リーマンショックがあった2008年のこと。何度も何度も試行錯誤し、最終的に2年の歳月をかけてようやく完成させたのが、「てのひらトング」という商品でした。
てのひらトングは、その名の通り、手のひらのような使い心地のトング。リーチがない分、食材を確実に取り分けることができ、掴みにくい小さな食材やドレッシングをすくうこともできる、とても便利な製品です。
最近では、似たような商品を見かけるようになりましたが、当時はこういったトングは、笠原さんがつくるもの以外にはあまり見かけませんでした。それもそのはず、シンプルな形ですが、難しい技術がたくさん詰まっていて、簡単に作れるものではありませんでした。
しかし長年、ものづくりだけをしてきた笠原さんにとって、初めて生まれた自社商品。いくつもの展示会に出展して売り込みをしてきましたが、人の良い笠原さんは、興味を持ってくれる人に嬉しさのあまり聞かれたことに対して、全て丁寧に説明してしまったそうです。
その結果、他社からも同じような商品が次々と発売される結果となりました。こうして「てのひらトング」に似た商品は、世に溢れはじめます。その中には、同じような機能性があり、大量生産している会社はもっと安価に提供することができ、多くの人はそちらを選ぶことでしょう。残念ながらやはり価格で選ばれてしまうものです。
でも、僕らはやっぱり笠原さんの商品を使ってもらいたいと切に願っています。価格や見た目だけでなく、「この商品に関しては笠原さんから買おう」そんな風に思ってもらえたら、笠原さんがまたてのひらトングのような世の中にない新しい商品を生み出す原動力になるんじゃないかなって思います。先細りし続ける日本のものづくりを、これからも支えていくには、消費者であるひとりひとりの心がけだと個人的には思います。
もしトングをお探しという方がいれば、ぜひ笠原さんのもの使ってみて下さい。
手のひらトング・手のひらサラダトング/笠原スプリング
https://denshobato.tokyo/item/20735.html
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