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2021.11.16(火)

ワンシーズンで終わらないものづくり/伝所鳩のお便り(41)

夷草はんてん/宮田織物

流行を追いかけながらいろいろなファッションを楽しむよりも、気に入ったものがいつでも買え、何度も何年も着れる方が安心します。

ファッション業界は、とても回転の早い業界です。今年販売された服が、来年も再来年もずっとお店に並び売っていることはほとんどないと思います。売れなかった服は、セールで販売されたり、福袋でまとめて売られてしまったり、それでも売れなければメーカーに返品されたり、廃棄されてしまうこともあるかもしれません。そうやってお店に並ぶ商品は次々に新しいものへと入れ替えられていきます。

とても気に入って買った服があったとします。その服をボロボロになるまで着て、もう一度同じ服が欲しいと思い、購入したお店を再び訪れます。しかし、同じものは売っていなくて別のものを買ったり、諦めたという経験をしたことがある方もいらっしゃるかもしれません。それは前述したように回転の早い業界の中で、次々と新しいものを消費者は求め、それに応えるように次々とメーカーは新しいものを作っているから。同じものを求める人は少なく、そして同じものをずっと作っているブランドも少ない。気に入って同じものを買い続けるということは、簡単なようで実は難しかったりします。

伝所鳩で扱っている商品は、基本的には定番品と呼ばれるものがほとんどで、生産者の皆さんは同じものを何年も作り続けられています。小ロットのものや、ワンシーズンだけのものをその都度作るのは作り手さんも大変ですし、同じものを作り続けるということは、それだけ技術も上がり品質も良くなっていくことが多いはずです。

例えば、現在開催中の宮田織物さんの「わた入れはんてん」は寒い時期だけ販売している商品ですが、何年も変わらず作られているものです。今年だけしか作られていないものではなく、毎年作り続けているからこその品質が詰まっていて、それはワンシーズンで終わってしまうようなものづくりではないと思っています。

お客さまからこの商品は来年も販売しているかと尋ねられることがありますが、基本的には来年も再来年もその先も、お店がある限りは扱わせていただく予定です。もちろん無くなってしまう柄や型、お客さまの需要に合わず扱いをやめる商品もあったりもしますが、はんてんもそれ以外の商品も長くご購入いただけるようにしたいので、安心してボロボロになるまで着ていただき、何度も何度も買い直していただけたらなと思います。

だから、定番品を扱う伝所鳩ではセール販売は基本的に行っていませんし、いつ来ていただいても、ネットで購入いただいても値段は変わりません。お客さまにとってお得さはないかもしれませんが、いつ来ていただいても手に入る安心感を提供することが伝所鳩らしさであり、ぼくらがやりたいことです。

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